それでも自宅で暮らしたい

K様 80歳代 女性 要介護4 現病歴:パーキンソン病ヤールⅣ度、Ⅱ型糖尿病、直腸脱 認知症の夫と2人生活。
子供達は遠方に居住、キーパーソンは長男妻。訪問診療・訪問歯科・訪問リハビリ利用。

パーキンソン病に伴う姿勢反射障害や運動障害、ジスキネジア等出現していたが日常生活は自立。
他者との交流が好きでリハビリ型デイサービスにも通っていた。一人での外出時に転倒し緊急搬送されたのを機に外出は殆ど無くなり、食事や洗濯、買い物等の家事は夫が中心になった。

便秘症もあり頻繁に直腸脱を繰り返すようになり、手術を受けるも重度の直腸脱で改善に乏しく整復困難になることが増え、安静にして直腸脱を予防する日々が続いた。
セカンドオピニオンで手術を受ける事を決意、腹腔鏡下にて直腸脱根治術を受け完治する。
安静入院生活に伴うADL低下・筋力低下は著明で、日常生活は以前より介護が必要な状態となった。

退院後は直腸脱を起こす事が無くなり、今まで制限していた洗濯や整理作業等の家事で動き回っていた。
パーキンソン病で何をするにも時間要し、すくみ足で踏み出しが悪く途中で立ち止まって動けなくなり、夫に助けを求める事が度々出現、転倒も繰り返すようになっていた。
「調子が悪い。」との発言が増え表情は曇りがち、体が思うように動かないために苛立つ事も増えていた。デイサービスの再開やPTによるリハビリは拒否。
体が思うように動かない事や転倒リスクを自覚しており、人に迷惑をかける不安の思いが強かった。

環境変化に対するストレスが影響するので、看護師によるリハビリを開始する。
「動けない。」と嘆くことはあったがリハビリに懸命に取り組み、「もう少し歩けるようになりたい。」と看護師によるリハビリメニューを熟す事で、1か月後にはPTによるリハビリを導入することができた。

本人も夫も認知症が進み、作ったばかりの義歯をごみ箱に捨ててしまった。夫も自分の事で精一杯で、妻の介護が出来なくなった。
それでも二人で住み慣れた自宅で暮らしたいと希望している。

神経難病は徐々に進行が進み治療は長期化、肺炎などの感染症をきっかけに症状が急激に悪化することがある。
K様は直腸脱や手術に伴う入院をきっかけに病状が進行してしまった。
体調には波があったが、看護師から見ると調子が悪くなさそうな時でも本人にとって理想の自分と異なっており、進行する症状と戦っているように感じた。
理想と現実にギャップ、症状改善への希望と体が伴わず、迷惑をかけてしまうという気持ちを知り、ケアやリハビリが出来ずアプローチが難しいと感じる事もあった。
現状維持が難しいパーキンソン病だが、ご自身の理想や希望、気持ちを育み支えて関わっていきたいです。