在宅終末期におけるACP支援の実際

K様 70代 女性 要介護1 病歴:S状結腸癌(終末期)・腎後性腎不全・貧血・腎瘻カテーテル挿入 身体障碍者手帳取得 配偶者なし 姪と愛犬との生活
S状結腸癌術後、浸潤により腎瘻カテーテルを増設。退院後自宅生活を送るにあたりカテーテル管理目的にて訪問看護介入する。

週1回の訪問で、入浴介助や腎瘻カテーテルの消毒や包交を実施。介入から約1年後に腸閉塞により再入院。
癌が進行しており外科的治療は行われず対処療法・緩和的治療が施される。

ご本人の希望により自宅退院、退院時はNGチューブや、左鎖骨下ポート、麻薬の持続皮下点滴、腎瘻カテーテルが留置された状態。
帰宅時、「気分は良くないけど、やっぱり自宅が良いわね。」と話し安堵した様子あり。
体調の良い時間帯にはダイニングまで歩行しテレビを見たり、姪と談笑する時間もあった。

高カロリー輸液を主体とした療養生活であったが、紅茶やスープ、飴、チョコレートなど少量の経口摂取を楽しむ様子もみられた。
「賑やかな方が良いわね」と話し、ベッドサイドでは姪と愛犬とともに笑い声が聞かれる時間が多かった。

親戚の方の訪問もあり、何気ない会話から今後の過ごし方や本人の希望など先の事まで話をすることが多く、日常生活の中での楽しみや人との関わりを大切にしている様子が伺えた。
本人は同居する姪への負担を気にしており「いずれはホスピスに…でもまだ見学に行く気持ちにはなれない」と話し、療養場所について迷いが見られていた。

一方、姪は「自宅で最期までみたい」との思いを持ち看護師に相談しながら介護を行っていた。
訪問の中で、これまでの生活歴や育ってきた環境、癌告知時の思いなどを語られる機会が多くあった。
「そうなのよ」「でも仕方ないじゃない」と笑いながら話される姿が印象的であり、これまでの人生や現状を受け止めながら過ごしている様子がうかがえた。

療養過程の中では、尿路感染症による発熱、疼痛、褥瘡形成など身体状態の変化が見られ、徐々に体力の低下が進行した。
また、NGチューブの自己抜去や危険行動と思われる様子もみられ、せん妄の可能性も考慮しながら安全面の観察を継続した。

姪御様は様々な状態変化があった際も落ち着いて対応されていた。また「苦しくないのが一番」と話し、疼痛で苦しんでいる時にはドーズの使用や体位調整を行うなど、本人の苦痛軽減を第一に考えながら介護に取り組まれていた。
看護師とのコミュニケーションも積極的であり、療養生活を支える重要な存在となっていた。
その後徐々に全身状態は悪化し、家族に見守られながら新しい年の始まりとともに自宅にて永眠された。

「自宅で過ごしたい」という希望と「家族へ負担をかけたくない」という思いの間で揺れ動く姿がみられた。
終末期患者は身体的苦痛だけでなく、家族への配慮や将来への不安といった心理的葛藤を抱えている。
結論を急ぐのではなく、その時々の思いに寄り添い、対話を重ねることが重要であると学んだ。

また在宅療養においては家族の意思や経験も大きく影響する。
姪の思いを尊重し支援した事で、本人・家族ともに納得のいく在宅療養と看取りにつながったと考える。
本事例を通し、在宅におけるACP支援は「意思決定を導くこと」ではなく、その時々で揺れ動く思いに寄り添い続けることの重要性を再認識した。