S様90代後半男性 要支援2⇒要介護2 認知症中度。完全房室ブロック、ペースメーカー心筋症、心不全、独居でADLは維持。通所サービスを週2回半日のリハビリ目的で利用。
認知症の妻は、近隣のお泊りディサービスの利用。離れた所に住む3人の息子は順番で父親の様子を見に来ている。
毎晩近隣の居酒屋で晩酌を楽しみ、生活は自立していた。ある日右腕を怪我して出血していることに毎日立ち寄る居酒屋店主が発見。
すぐ近隣薬局の相談、応急処置して翌日病院に連れて行き、7針縫合する傷で毎日消毒とガーゼ保護が必要。急遽相談が当訪問ナースステーションに入った。
当日病院MSWRに連絡取り当日から訪問看護指示書発行、処置で訪問することが出来た。
傷は約3週間で完治となったが、看護師が生活の中に入ると、認知症がかなり進んでおり、お風呂好きなのに、お風呂の湯沸かし操作を忘れて入らず、着替えも面倒、尿失禁を常にしていた。
下肢の浮腫や白癬菌感染と外反母趾、陥入爪の両足、全身乾燥性皮膚炎で落屑が舞った。自分で調理した味噌汁が腐敗していた事も解った。
継続して看護師が定期訪問することになり、週1回入浴、全身状態観察、内服管理を行った。ある日訪問時呼んでも応答なく寝室に行くと「腰が痛くて動けない」との事で寝たきり状態であり、肋骨を骨折していた。
その後もコロナ感染やインフルエンザ感染で寝たきり状態になったが、ご家族やヘルパーさん、ディサービス、近隣の方々が連携して介護し、何度も復活した。訪問診療も導入した。
桜の咲く頃に妻が老衰で急死し、憔悴を心配したが、すべてを受容し穏やかな生活を送ったある日、ディサービスから帰宅時、熱発していると緊急コールで訪問。
肺炎の疑いで、かかりつけ訪問医に連絡し、救急搬送で地域連携病院に加療入院した。2週間順調に回復しそろそろ退院と話した矢先に誤嚥性肺炎で他界。
日に日に老いる身体は免疫力も低下していたようだ。葬儀はみんな泣きながら笑って見送った。妻が寂しくて連れて行ったのだろうとオシドリ夫婦に敬意を表した。
「いつも皆さんに助けてもらってありがたいと思っています。困ったことなど全くないです。」と笑顔で、何処でも人気者でした。
近隣の薬局さんや居酒屋さんは高齢者は勿論、地域の人々が安心して立ち寄る情報発信場所、ギャザリングスペースで守られ、愛された方でした。
独居でも高齢者が自宅で住み続ける意義、我がステーションも近隣のギャザリングスペースの一員、地域資源として、お役に立ちたいと願っております。