最期の時を一緒に過ごす

I様 女性 48歳 要介護4 転移性脳腫瘍・右乳癌・肝転移・既婚で子供二人キーパーソン夫同居

6年前癌発見し、手術するが転移し、また手術。抗癌剤治療は通院で行っていた。辛い治療と治したいという気持ちが折れてしまう自分と闘い続けた。
母として、妻としての役割を果たせていないのではないかという思いと、癌で衰弱し思うようにならない自身の体で、介入当時、精神的にも身体的に状態が不安定。高齢になった夫の両親の家の新築、同居を機に、新婚当初から住み慣れた場所からの引っ越しで、環境の変化や進行していく病気による身体的苦痛、不安の中で、ご本人が望むこと・ご家族が望むこと、」双方を取り入れながら看護師が寄り添い介入していく必要があった。
看護師に思いを吐き出せるように、信頼関係つくりに徹した。限られた時間を少しでも一緒にいたいと願うご家族のご意向を尊重した。一緒にいたいと思うのは当然だが、癌によって衰弱した体には、休息も必要で、倦怠感の強い時は応えて上げられないことで、落ち込んだ。
ケアマネージャーにショートステイを探してもらったり、多職種との連携も必須だった。通院の際にはいつも付き添われていた夫、ご家族は手術のインフォームドコンセントも家族一同で説明を受け決めた。最後は出来る事全てをやるのだと決めて、脳腫瘍切除手術を受け、緩和病棟のある病院に転院し、その病院で家族に見守られ昇天された。
葬儀に参列させて頂いた際に、ご家族から最後の様子を伺うことができた。冷静沈着な夫が泣き崩れる姿に、今までどれだけ頑張って気丈に振舞っていたのか涙が零れた。母としての役割を果たせないと悩んでいたが、子供たちはママと一緒にいることを何よりも一番とし、とても逞しく、優しく成長していた。傍にいる中で自然と感じ取って、お母さんからたくさんの事を学んでいた。

傍にいられることで役割は自然と果せていた。「ママ、頑張るね」とご家族に伝え、手術に向かわれた強さは、子供たちの心にママとの約束として刻まれていた。一人では、難しいことも、愛する人の支えがあればこそ、できることは沢山ある。ご家族のようには出来なくとも、看護師が傍で寄り添い、支える力となれたらと思った。(足立)