難病と在宅療養  

J様 男性 73歳 要介護2 現病歴:筋萎縮性側索硬化症(ALS) 

胃瘻、ラジカット点滴治療中。うつ症状の既往あり。ALS進行性のため急激に発語は全くできない状態になり、コミュニケーションはiPad使用。ADLはほぼ自立。夜間は人工呼吸器(BPAP)を装着。
キーパーソンは7月に結婚したばかりのご長女様。当初2021年12月に呂律が回らない症状出現し2月に診断確定。4月に胃瘻造設し5月より自宅療養となる。発病するまでは現役で活躍されており、趣味も音楽、スポーツ、山歩きと多趣味でおられた。7年前に奥様を亡くされ、一人暮らしをしていたが、発病もあり、結婚を機にご長女様が同居され介護の生活が開始した。在宅療養開始直後の5月は疾患に対し前向きな発言も聞かれ、経管栄養もトラブルなく経過。

6月、7月になるともともとあった前立腺肥大症による尿閉から膀胱留置カテーテル挿入となるが呼吸リハを含め筋膜リリースなどのリハビリも意欲的に行っていった。点滴治療も前向きに行える。流延も多くなり、嚥下状態が悪く、痰の吸引回数は増加傾向にあった。8月になると長女が復職し、日中独居で、一人になる事の不安が増強、もとよりあったうつ症状出現で点滴治療や経管栄養も拒否されるようになり、呼吸筋低下に伴う痰の排出困難や心理的なことから不眠も出現し不穏状態へ急変した。
ご家族も仕事と家庭がある中で、できる対応は全て行った。進行する病状を充分に観察し、状態に合わせた看護を提供するために他職種との連携、利用者の身体状況と介護者の介護技術力に合わせた介護方法を検討する事が必要とされた。

ご本人を含め、ご家族、医療従事者、介護者ワンチームとなり向き合う事が最初は出来ていたが、病状進行に伴い不安やうつ、家族の役割の変化で残念ではあるが在宅での療養は一時見送ることとなった。身体的にも精神的にも難病を受け入れ、支えていく事は一筋縄ではいかない事を知った。
しかし、ご本人の希望で入院を選択し、気管切開は絶対しないと仰っていたが、気切造設し、生きる選択をされ、現在は生活の場に戻るステップ段階とし、老人施設へ一旦入所し状態安定を待っている。
また在宅へ戻れる日を心待ちにしております。(足立)