3周年記念号「最期は自宅で」

Ⅴ様 74歳男性 多発性肝癌末期・膵癌・脳転移・骨転移。介護認定申請中。癌末期医療保険適用。

大学病院MSWから突然の電話「いつも急なお願いで、癌末期で今日明日危ない状態で自宅に戻してあげたい。
ご本人もご家族もご自宅でと望んでいる。一刻も早くこれから退院させたい。受けてもらえないだろうか?」という内容。
メンバーが揃え受けられると返事し、退院を待った。さぞかし疼痛や倦怠感,不快感が強いだろうが、「大丈夫」と笑顔で応え、退院を喜ぶご家族に囲まれ幸せそうだった。
医師が今の状態やこれから急変するだろう状態変化、救急時の対応を丁寧にご家族に説明した。看護師は夜・深夜・朝方と訪問し、癌末期の症状を説明し、ご家族ができるケアの指導を行った。
ご本人、ご家族は一睡もせずに語り合ったという。アイスクリームも食べた。「延命をしないで欲しい。家族が大変だから。覚悟は出来ているから」と何度も仰った。
早朝訪問時疼痛で苦悶様顔貌が強く、鎮痛薬を座薬で投与し医師が訪問。鎮静をすることの説明と同意をいただき麻薬で鎮静開始。静かに眠っている様子。
介護スタッフと全身保清し着替えが終了しご本人に伝えたところで呼吸異常。ご家族を呼ぶのと同時で眠るように呼吸停止。医師が駆け付け最期を診取った。

1泊2日の自宅滞在だった。あまりにも急なことで、ご家族はもっとどうにかできたのではないか、悔しい、信じたくないと仰り、現実が余りにも残酷だった。心が落ち着くまで、ご家族だけにして見守り、「最期の水」を行った。
その後は頑張ったご本人を労い、笑いながらエンゼルケアを行った。生きる時間が切迫し緊迫した2日間、今回もご家族を巻き込み、チームの一員となって頂いた。
医療介護連携SNS(MCS)で連携を図り、ワンチームとして、情報や指示が早く、素早い対応ができた。グリーフケア中にご家族から「家に帰れるとは思わなかった。
家で看取れて本当に良かった。自宅で安心して看取れることを知って驚いた」と伺った。

最期は自宅に帰してあげたいと切望する病院MSWさんはじめ、チームの役割を自覚しフットワークの軽い多職種メンバーの熱い思いで、希望すれば喜んで頂ける在宅お看取りをもっともっと地域に浸透させ、ご利用して頂けたらと日々切望いたします。(橋井)