ご本人の意向と家族の意向の違い

I様。73歳、女性。要介護2。喫煙者。訪問医療利用 Ⅱ型から移行したⅠ型糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス・左大腿骨骨折・左鎖骨骨折の既往あり。主介護者は要介護4の同居の夫。共に重度の疾患。
近隣に娘様居られるがご本人との関係は不良。ケアマネさんから糖尿病の管理ができているのか心配とご相談あり、2021年9月より訪問スタート。

訪問当初はやはりインスリン管理が全くできず、病識なく指導すると易怒性の性格表出。内服薬は全く飲めず残薬が膨大にあった。看護師の訪問も必要ないと、バイタル測定のみ関わらせてはくれるものの血糖測定、インスリン注射、内服管理は自分でやっているからと拒否。夫も自分の事で精いっぱいで、介助はできず、それぞれが自己管理、セルフケアを行うことで在宅生活を維持していた。2022年8月より血糖測定を受け入れる。歩行時もふらつき著明で転倒繰り返すため、11月より週2回への訪問回数増加。理解し優しく心配した看護師を受け入れ始めた。病院通院が出来なくなり12月からは訪問診療に切り替え、血糖測定、インスリン注射、内服の管理も医師の指示通り介入したことにより、高、低血糖に早期の対応ができ、インスリン接種も日に1回で維持している。

また、入浴介助で自宅で入浴し保清できることによりスキントラブルも改善。ご本人も爽快感が得られ、訪問看護師に心を開いた。夫のレスパイトケアの為に2月には禁煙しショートステイも前向きに取り入れた。ADLも上がって居宅内ではつかまり棒などを使用しながら歩行状態も安定。自ら室外歩行訓練のリハビリをしたいと意欲もでてきた。これも少しは介護するご家族の負担を軽減させて、在宅で自由に過ごしたいご本人のご意向を実現させる為で、夫婦お互いが支えあって希望する在宅生活を維持する為の事。しかし、夫と娘の意向は入所させたい、在宅で居心地が良くなり過ぎ、ご本人が施設の入所しなくなると困ると言うこと。夫のレスパイトケアは我儘な妻がいない事と言う。客観的に、一人だけが支えられているのではなく、お互いが支えあって現在の生活が成り立っている。

在宅で過ごしたいご本人のご意向と施設に入れたいご家族のご意向。ケアマネさんは両者に寄り添い、両者の折衷案を模索している。看護師としてご本人が一日でも長く在宅にいられるよう、ご本人への指導を行いながら、ご家族にトラブルが起きない様に、充実した日々を過ごして欲しいと願います。ご意向が一つとなり、最期は在宅か施設か決めるのは本人であり家族です。在宅看護で更に寄り添っていきたいと存じます。(足立)