何度も救急搬送、それでも構わないで欲しい

K様。71歳、男性。要介護2。気腫合併肺繊維症。在宅酸素療法と吸入薬ほか内服薬なし。数か月前に同居していた妹が病死で独居。今回の入院を機に禁煙。
自宅で低酸素状態で自ら救急車要請し日赤病院に搬送。点滴や酸素療法行うがタバコが止められず、治療を拒否し自主退院。
自宅で呼吸困難。地域包括支援センター職員が発見し、都立広尾病院に救急搬送。細菌性COPD憎悪で加療入院。誤嚥もあり、嚥下時と労作時、排尿時に著しいSPO2も低下みられ、酸素療法と車椅子移動。

病識の薄さや内服薬コンプライアンスの悪さがあり、せん妄もみられ、これ以上治療を望まないとの事で退院に向けて退院前カンファを行った。しかし、ご本人は「人が来るのは嫌だ。何もして欲しくない。困っていないから構わないで欲しい」というのがご意向だった。ケアマネさんが、訪問診療、訪問看護師、訪問介護とチームを作りサポート体制を作り退院後のサポートに備えていたが、決して無理強いしないでタイミングを待つことにした。

まずは2週間特指示で毎日訪問看護が入り、酸素管理・禁煙指導と訪問医療介護について、人と関わることでの安心感や居心地の良さを感じて頂くことに徹した。当初は不愛想で「何も用事ないよ。苦しくないよ。大丈夫。いつ死んでもいいよ。財産は国に寄付するから」と言い、酸素も使用しないことが多く、雑然とした部屋に布団での生活をしていたが低血圧・低酸素状態継続、疲労感がない時は酸素使用せず自転車で出かけ、玄関先で喘いで呼吸する姿を発見することもあったが「疲れただけで苦しくない」と言った。
決して責めることなく、受容し寄り添った。「来てくれると嬉しい安心する」と言って下さる様になり、ご本人には窮屈な病院に入院しない様に、ある程度自宅で医療管理が必要な事を理解して頂いた。禁煙も継続できている。疲れたと感じた時が苦しい事と教えた。自分で測定器を購入し数値測定で息苦しを可視化した。酸素は吸入すると楽になることを理解できた。ヘルパーさんも受け入れることが出来、居室も整然とし気持ち良いと喜ぶようになった。人の温かみを知ったと話した。

今では積極的にリハビリも開始し、呼吸状態が改善している。宝くじを買った。当たったら自宅を改築して一人で住もうかなと生きる希望を話す。在宅包括ケアチームに守られ、穏やかな生活を過ごされています。今までの人生も大事、これからの人生はもっと大事で、人に助けて頂きながら充実した日々を過ごして欲しいと願います。在宅看護で人間力を養い更に寄り添っていきたいと存じます。