胃ろうは延命?

Ⅿ様80代後半男性 要介護5 脳梗塞後左片麻痺、半側空間無視,腰椎圧迫骨折術後 左耳強度難聴だが補聴器装着嫌う。キーパーソンは別居長男 同居は妻と常駐家政婦 訪問診療、訪問看護、リハビリ、デイサービス利用中。

実質常駐の家政婦がキーパーソンとなり、認知症の妻と3人で穏やかに過ごしていた。
入れ歯なく食欲もあり、腰椎圧迫骨折術退院時から体重も増加していたが、偏食が多く、難聴のためご家族の声も大きくなり、喧嘩をしているような雰囲気となって、二人の女性から禁止事項が多くなっていた。

季節の変わり目に、食欲ない、ご飯がまずくて食べられないと言い、全く今までの食事は受つけないが、寿司や天丼・鰻はよく食べられたし、炭酸ジュースは飲むことが出来た。
食べられるものを食べられたら良いと伝えると、家族は偏食を助長し栄養不足になると叱ってしまうことが多くなり、喉がつかえたようになり何も喉を通らなくなったと訴えるようになった。

嚥下検査や消化器検査をしたが異常なし。心療内科受診で家族からのストレスによる拒食症と診断。
脱水症と体力減退で点滴開始するが、体重減少でADLの急激な低下があり、入院加療。
自宅に戻りたいというご自身の希望で、自宅に退院。「老衰」の診断。

延命はしなくてもよいが、点滴しないと死んでしまうのでして欲しいと家族の希望。
在宅主治医は胃ろうを勧めるが、延命治療なのでと拒否。寿司なら食べられると偏食するが、偏食は元気にならないと再入院。
経口摂取しながら、足りない分を胃ろうで補う考えばどうかと提案。ご家族、ご本人も胃ろうを前向きに検討。

しかし、経口摂取が出来るようになったので退院予定の知らせの翌日、誤嚥性肺炎で永眠する。
また、同時期に80代後半の方から自宅で食事が摂れなくなった、どうしたら良いかという相談を受けた。
延命は望まず、点滴は一時的に必要であれば受け入れるという事だった。
血液検査の結果は全て基準値内。経口摂取できれば良いが、喉が詰まるようで飲み込めないと訴える。
胃ろうを延命と捉えるのではなく、栄養を口以外から管に繋がれた状態にならずに摂ると考えれば延命ではないのではと提案した。
しかし、翌日サービス中止の連絡があった。

胃ろう治療の捉え方や限られた時間の中で、ACPの進め方、タイミングの難しさ、受け止め方、どう支援していくか、傾聴し見守り看取ることの大切さと難しさを再確認しました。