リンパ浮腫の看護

R様70代後半女性 要介護2 認知症軽度あり。完全房室ブロック、ペースメーカー心筋症、心不全、子宮頸癌術後、癒着性腸閉塞術後。両下肢浮腫著明。
認知症夫と二人暮らし、同マンションに長女家族在住。近隣に次女宅あり、介護力は充足している。大学病院循環器科かかりつけ医。
腸閉塞術後軟便で、排便回数多く失禁あり、リハビリパンツ着用。また、痔があり、切れ痔を起こし、疼痛あり。
食事の準備は重度の浮腫と血栓予防で、長時間台所に立てず、介護者の娘たちが準備する。ペースメーカ装着での心不全と転倒のリスクがあり、入浴は看護師が介助。
入浴後血液循環が良好なタイミングで両下肢リンパマッサージ施行。歩行状態安定し下肢の浮腫の悪化無し。

ご長女様が食事管理を厳格に継続され、自ら弾性ソックスとバンドを上手に着用され悪化予防し、下肢筋力も維持でき、活気があり、外出も楽しまれていた。
R5.6/2からマッサージの時間を増やして欲しいとご本人から要望あり、訪問時間を90分間に変更。
6/19の循環器内科受診時、心臓肥大が解消されて状態良い傾向だと言われたとの事で安心し、外出できていた。7・8月も外出が増え活動量が増えていた。

しかし、9月頃から下肢の浮腫と体重が増加傾向になり10月中旬頃から断続的に左足の痺れ出現。リンパ浮腫の症状出現。
立位時、左脚のみ赤色変化認めるようになる。ケアカンファレンスの結果、10/27から用手マッサージの代わりに、ご本人所有の医療空気加圧マッサージ器(メドマー)使用で浮腫軽減と下肢のリハビリで筋力アップを図るようにした。
11月、足の痛みと痺れ、浮腫継続し、活動量は激減し体重増加傾向。また、以前に比べて息切れと倦怠感を訴えることが多くなり、何もやる気がないと消極的発言がみられた。
11/20から11/30下肢浮腫憎悪と鬱滞性皮膚炎で入院。退院直後は、両下肢の浮腫は減少し体重も4.4Kg減量していた。
1/10にリンパ内科を受診した結果、左足先の痺れは整形外科的な原因、腰椎ヘルニアの疑いだが、ペースメーカー埋め込み中で精査出来ず。
リンパドレナージは、心負荷が掛かるため禁止し、弾性包帯で圧迫療法で経過観察となった。

リンパ浮腫のケアに対しての勉強不足で、ご本人が「気持ちが良いので、マッサージや擦って欲しい」との要望で5か月余り、
リンパマッサージやストレッチを行っていたが、リンパ節の廓清で一度傷ついたリンパ管は正常に戻ることがなく、
リンパ浮腫を発症させると完全に治すことはできないし、適度な運動やバランスの良い食生活で体重コントロールに努めるべきであり、また、適度な有酸素運動で悪化を防ぐべきであった。
 

原病の観察やリンパ廓清による血行不良や今後、リンパ廓清後の浮腫に対してどう支援していくか、再学習、考る機会を得られました。
本人の要望に応えるだけでは、エビデンスに基づいた看護技術の提供にはならない、利用者に説明し、心不全とリンパ浮腫のセルフケアと病識の指導の徹底、内服管理、病状を悪化させないケアを一緒に行うことの大切さを痛感しました。