在宅看取りの為に

Ⅿ様 86歳女性 レビー小体型認知症。重症大動脈弁狭窄症。要介護4。訪問診療、訪問看護、訪問介護、通所ディサービス利用。
訪問医は通院が大変な事と心疾患の急変リスクが高いためで、夫と二人暮らし。2世帯住宅で長女が隣に在住。

宅配弁当と自分で簡単なものは作っている。夫は毎日徘徊、早朝に下着姿で歩いているところを発見され、警察官に保護される事が数回あった。
ご本人は、一人で買い物外出中に意識消失し、通りかかった人が救急車要請し、救急搬送。虚血性の心不全と診断。
心臓弁膜症の手術をするか問われて、しないと言い帰宅。このような問題が起こる半年前まで、それぞれが自立していると思われていた。

長女は介護に困り依頼が来た。長女の介護負担軽減のため、連日ディサービス利用。ご本人、易怒性あり、物を投げる叩く等暴力的なところがあり、連日夫婦喧嘩が絶えない。
ご近所からのクレームもあり、ショートステイ利用。1年近く入浴していないとのことで、入浴看護を実施。
「自分は病気ではないので構わないでください」と拒否はあったが、健康チェックとし、、看護師に慣れると自ら入浴を望んだ。
長女は二人の介護は無理だと折り合いの悪い母をショートステイにした。

ショートスティ先から発熱していると連絡あり、訪問医往診し、とても危険な状態で、これから急変する状態変化、救急時の対応を丁寧にご家族に説明し、ACPを導いた。
長女は一刻も早く帰宅させたいと点滴しながら帰宅。「お泊りに行って元気で帰ってくると思っていたのに急に危篤と言われてもどう理解したら良いのか解らない」と動顛。
酸素飽和濃度が急激に低下し、酸素療法の機器を導入。認知症で「どこも悪くないのにこんなもの」と点滴も酸素カニュレーも自己抜去してしまった。

ご家族は「延命はしないで欲しい。本人も望んでいないから、覚悟は出来ているから」と仰った。早朝ベッドから落ちていると緊急コール。
一睡もしないで介護、会話していた夫は茫然としていた。静かに眠っている様子に心肺停止状態だった。
早朝ながら訪問医が駆け付け最期を診取った。1泊2日の自宅滞在だった。

ご家族の悲しみは大きかったが、頑張ったご本人を労い、「救急搬送で病院ではなく家で看取れて本当に良かった。
自宅でなければもっと悔いが残ったはず」と伺った。日ごろからチーム連携で、緊急対応ができ、悔いの残らない在宅お看取りができる事を地域に浸透させ、ご利用して頂けたらと切望いたします。