50代母親D様と30代息子E様、二人暮らし、生活保護受給世帯。
D様、要介護3、脳梗塞で右半身麻痺あり。キーパーソンE様、既往歴不明。精神疾患・セルフネグレクト。父親他界、UR賃貸物件2DKに居住。
D様は、電動ベッド一式・電動車椅子、訪問看護週1回、訪問介護と障害併用でヘルパーさん週3回、通所介護は週1回の予定だが外出が困難で月に1回の通所。
室内は物が散乱、訪問するのに足の踏み場なし。ゴミの量と悪臭で不衛生であり、転倒し易い環境。
悪臭の原因はゴミの腐敗臭と息子の不潔な体臭によるもので、近隣まで臭気は蔓延。
まずは母親のベッド周辺の環境整備とトイレまでの安全な動線確保を目標とし、担当CMと訪問介護事業所から6名の有志が集結し(生活保護ワーカー、地域包括、障害担当は協力なし)、
半日でベッド周辺と動線は確保できたが、約1年後にも同様に有志で環境整備を行った。
キーパーソンE様のADL低下で、内科医の受け入れ先はなく、精神科の訪問医が全身を診てくれると訪問開始。
エアコンのない部屋で夏を迎えるが、食欲不振・脱水症状・両下肢の浮腫顕著。
片麻痺のD様が部屋へ入れることは出来ず、ペットボトルを投げ入れるので精一杯。
この状態での問題点
①年齢的に介護保険が利用できない。
②10年以上外出もしていないので病歴不明。
③公的機関も非協力的。
④精神往診医も医療保護入院の対象ではないとの事。
色々協議の最中にも意識レベルは低下し重症化、母親が救急車を要請するも本人拒否搬送できず、4回目の救急車要請で漸く搬送その時点で意識混濁、三次救急病院に搬送され治療が開始となる。
年齢が若く、一命を取り留め、褥瘡も回復しリハビリ病院へ転院となる。
自宅退院迄の3か月間でE様の部屋の環境整備が急務となった。
畳は腐敗しフローリングの工事が必要で、D様に金銭的負担をお願いし、自費サービスで環境整備が開始し、その間にリハビリ病院での退院前カンファレンスに参加。
歩行器で歩行できたが、左目の失明・全身皮膚の脆弱化・両膝の拘縮・発語や嚥下機能に軽度の障害があると判明。
自宅環境が整い無事に退院、自宅では母親とのコミュニケーションも出来るようになっている。
その後、精神科の往診医と連携し精神障害者手帳を交付、精神訪問看護で介入。
週に2回訪問看護でセルフケアの指導とリハビリを行い杖歩行で近隣のコンビニまで外出できている。
生活環境や寄り添う人の温かみの大切さ、人の生きる尊さや人の生命力の強さを再確認すると共に、
機能不全家族のキーパーソン役割とは、若い家族の急変時に在宅で、介護保険や医療保険で介入できない時、
どのように社会資源を活用すればよいのか、コメディカルがどのように連携し、動けばよいのか等の問題点、ジレンマを痛感した事例であった。