K様70代前半、男性。要介護2現病歴:腎不全・糖尿病・人口透析週3回。既往歴:高血圧症。
KP妻、聴覚障害とスモン病の長男と姉の同居。全員糖尿病罹患。家族全員それぞれの通院は妻が自家用車で付き添う。
ご本人、自宅で転倒し両肩骨折で入院。退院後はADL低下著明で、週3回の人工透析のベッドへの移乗もできず、車いすで妻が送迎時介助。生活すべてに全介助。
糖尿病ありインスリン注射とSMBGは妻が行う。透析後は倦怠感が強くほとんど臥床生活。ベッド上での食事。排泄はリハビリパンツ着用。
排尿は全くなく、週2回の排便の世話も妻が行う。保清、更衣も全介助。認知症あり、易怒性みられる。
入院中に退院後の生活環境を整えるため、奥様と面談して欲しいとケアマネさんから相談あり、「お試し看護」でいかがですか?と奥様と面談。
生活指導や食事指導されるが全く理解できないという。まずは看護師卒業を目指しセルフケアができるようになることを目指しましょうとし、退院日にご本人と会った。
ご本人は「長年こうやって生きてきたから何も困っていないし、医者や看護師の事を信じていない。自分の気持ちを誰一人理解しようとしない。知ったかぶりして命令する。
今の主治医は俺の言いなりで、俺のことなど考えてもいない。医療関係の人は嫌いだ。」と仰っていたが、看護師の受け入れは良かった。
食事は明太子とご飯、トマト、みそ汁、お茶が好物で毎日食べていた。
何度も栄養指導や血糖コントロールで入退院を繰り返すが、セルフケアを行わない為、改善はなかった。
透析の日は体重4キロ増で体が浮腫んでいた。インスリン注射は自分で行っていたが、倦怠感が強くなり出来なくなった。
看護師はご本人に寄り添い傾聴し、栄養指導や水分調整、フットケアや皮膚ケア、リハビリ等実施し、ご本人と奥様にセルフケアの指導を行い卒業目指しましょうと話していた矢先に、突然、看護師を拒否し易怒性が表面化し怒鳴り「帰れ」というようになった。
奥様も「見ているのが辛いので、もう来ないで下さい。」「今まで一人で頑張ってきたので、看護師さんが優しく接してくれた事や色々教えてくれるのでとても楽しかったのですが、すみません」と謝るばかりだった。
看護師が良くして挙げたと思い、医療者側からの正論を押し付けてしまったのではないか、ご本人のペースに合わせていたか、余計なお世話、お節介になっていたか、常に自分を振り返り俯瞰することの重要を身に染みた事例でした。
