E様。97歳女性。現病歴:高血圧症・喘息。要介護1。長男同居。認知症なし。ADLは外出のみ介助。
70代までは茶道や絵画、ゴルフとお友達も多く、活発、活動的な生活。最近までディサービスに通所していたが、倦怠感があり中止した。
しっかりしているため、子供たちの言う事は全く聴かない。高齢でもあり、訪問診療と訪問看護師を利用したらどうかとケアマネさんが提案し、お元気ではあったが、軽いリハビリや医療相談で訪問開始となる。「自分のことは自分で、最後の最後まで子供に面倒はかけたくない。病院には行かない、検査も受けない。苦しくなく自宅で最期を迎えたい」と口癖。看護師と一緒に終活をはじめ、断捨離やエンディングノートも作り始めた。労作性の呼吸苦が酷くなり、主治医が検査を促すが拒否。コロナワクチン接種も拒否。3月初旬の週末深夜、寝室で転倒、自ら主治医に緊急コールで往診に来てもらうが、夜中に外の門や玄関を開錠し招き入れた。疼痛はあったもののセルフケアはできていたため様子観察となった。
転倒から1週間も経たないうちに急変し、急性心不全・肺炎で呼吸苦を訴え、酸素療法・福祉ベッド導入し、疼痛コントロールと鎮静治療となった。病院で検査をと何度も促すが、「高齢で治療はいりません。自宅でただただ穏かに、苦しいのだけ取って逝かせてください。」と同じ返事の繰り返し。全くベッドから動けないほど衰弱していったが、最期まで意識がはっきりとして、ご家族や私たちケアスタッフに自分思いをしっかり伝え、ベッド上でお子さんを叱る事もある程、気丈に自分スタイルを貫いた。
「いつもありがとう。私のわがまま叶えてくれてありがとう。最期までよろしくお願いします。」と仰る。ご家族も1ヶ月弱、毎日熱心に介護し、ご本人を支え、旅立の準備も始められた。主治医の医療チームも夜間の緊急コールに随時対応くださり、4月12日昼前、子供たちと会話を終え、眠るように穏やかに息を引き取った。
棺には「眠れる森の美女」が沢山のお花に囲まれ、ご家族も「お母さん、とても綺麗ね。最期までお望み通りにして頂いたわよ」と笑顔で見送りました。在宅での疼痛コントロールや鎮静、夜間の看護等課題はまだまだ多いのですが、ご本人、ご家族の不安なく、医療従事者に繋がっているということで安心したと言って頂きました。また、高齢者のお看取りは暗いものではなく、誰でも通ることであり、準備し遺族が慌てないように、困らないように援助することも大切なことを感じます。高齢者だからこそ「死}は身近で、忌み嫌うことですが、残された人が後悔の無い様にと願います。(橋井)